2020.1月号 ドクターコラム
とっていますか「性的同意」 ―リプロダクティブ・ライツを守るために―
産婦人科医 Mimosa代表 杉山伸子
「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医、杉山伸子です。
このコラムでは、リプロダクティブへルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしていきます。
パートナーとの「性的同意」について、次のうちあなたの考えと合うものはありますか?
- パートナー(夫婦)なんだから、性行為をするのは当たり前だ
- 私の子どもなんだから、いつキスしてもよい
- 同じ相手に、毎回、性行為の同意をとる必要はない
- キスをしたら、性行為をしてもいい
- 相手がイヤだと言ってなかったら、性行為もOKのサインである
どうでしょうか。
一つでもあてはまるなら、それは「性的同意」がとれていないことを意味します。 「そんな細かいこと、気にする話?」と思われるかもしれません。 でも、「性的同意」がとれていない=互いの意思が確認できていない性行為で、性被害や性暴力が生まれています。
あなたとあなたの大切な人、そしてお子さんの被害を防ぐために、「性的同意」について、ここで学びなおしてみましょう。
性的同意とは、お互いが性行為について積極的に同意していることを意味します。 積極的とは、「イヤじゃない」ではなく「したい」という主体性を伴うYESであるということ。
そして、その同意は、お互いが対等で平等な立場でなされることが大切です。
同意の内容は、次の4つ。
①誰と。
ここで覚えておいてほしいのは、もしこの点で同意がとれなかったとしても、そのことがあなたの存在や人格を否定したものではないということ。
②いつ。
たとえ仲の良いパートナー同士でも、「今はイヤ」ということがあります。
③どこで。
プライバシーが保てる、集中できる環境、清潔で、寒くないところ…。 お互いが納得できる場所を見つけましょう。
④どのように。
性行為の方法はもちろんのこと、私がしっかり同意してほしいのは、避妊方法と性感染症(セックスでうつる病気)を予防する方法についてです。
なぜ、これらの同意が必要なのでしょうか。
それは、リプロダクティブ・ライツを守るためです。リプロダクティブ・ライツとは、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関連した権利を意味します。私たちが健康である権利は、憲法で保障された基本的人権です。リプロダクティブ・ライツも同様、互いに尊重し、守るべき基本的人権です。
リプロダクティブ・ライツを守るためには、性に関することを自分の意思で決めることが大切です。
体に触れる、特にプライベートゾーン(口、胸、性器、おしり)を触る、セックスをする。これらのことが自分の意思と反して行われた場合、それは自分自身の尊厳を傷つけられたことに値します。
大切なパートナー同士ならなおさら、自分と相手の身体を尊重する気持ちを込めて、性的同意をしっかりとりましょう。
お子さんに伝えておきたいポイントは2つ。
①同意のとり方、答え方(特に、断り方)
たとえば、大好きなお友達にハグしたいとき、どうする?お友達の気持ちは、どうやったらわかるかな?
「ハグしてもいい?」聞けばいいだけだよ。
答えるときも、簡単。「うん、いいよ」でOKのサイン。
「ちょっとイヤだな、そんな気分じゃないな」と思ったときは、断ろう。
「今はダメ」とか「うーん、イヤだな。でも代わりに、手を握ろう」みたいに。
忘れないで。断っても、お友達だよ。嫌だという気持ちを伝えることも、相手への思いやりだからね。
②自分の体のことを自分で決める大切さ
自分の体のことは自分で決めるって、とっても大切。
他の誰かが決めるのではなく、自分が決める。
相手も当然、相手自身が決めること。
これを、自己決定権といいます。
自分の自己決定権も、相手の自己決定権も、大切なものです。どちらも同じように尊重しましょう。
この「性的同意」について、大学生たちがハンドブックを作成したそうです。 彼らの想いのつまったハンドブックは、下記サイトからダウンロードできます。
- 京都市男女共同参画センター ウィングス京都 (https://www.wings-kyoto.jp/association/publications/)
Mimosa代表 杉山伸子
10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。