118. 2025.2月号 ドクターコラム


「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医、杉山伸子です。

このコラムでは、リプロダクティブ・へルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしています。

昨年末、親戚に新しい家族が増えました。先日、年始の挨拶を兼ねて、会いに行ってきました。

赤ちゃんがいると、周りにいる大人たちが自然と笑顔になり、その場が明るくなります。可愛らしい表情に、私もほっこりさせてもらいました。

一方、初めてのことばかりで、赤ちゃんのちょっとしたことが気になるものです。受診する程でもなさそうだけど聞きたいこと、そもそも受診した方がいいかどうか判断がつかないことなど、不安のタネはつきないことでしょう。今回の訪問時も、いろいろなことを質問され、顔にできてきた脂漏性湿疹のこと、抱き方のコツなどを話して帰ってきました。

赤ちゃんの誕生は喜ばしいことです。しかし、それだけではありません。

たとえば、妊娠・出産前後は、女性にとってホルモンバランスが大きく変わる時期です。このホルモンの変化に環境や生活リズムの変化が加わって、産後うつなどの精神疾患を発症するリスクが高くなります。

また、パートナーの家事・育児分担率が低いと、女性は疲労とストレスをため込んでしまいます。家の中で赤ちゃんと二人だけで過ごす時間が長くなり、孤立してしまいがちです。

そして、これらのことが重なると、赤ちゃんの誕生を機に夫婦の関係が悪化してしまう「産後クライシス」が起きるかもしれません。

さて、今回のコラムでご紹介するのは、「サンゴクエスト」というボードゲームです。発達科学の研究者・助産師・社労士・学校教員・地方議員・子育て中の会社員・ゲームデザイナーなど、多様なメンバーが関わって、「産後クライシス」を回避するために開発されました。

ゲームはすごろく形式で進行し、赤ちゃんの発達スケジュールや先輩ママ・パパの声をもとに作られたマス目を通じて、子育てのリアルな悩みや喜びを追体験できます。ゲームの進行に伴い、プレイヤーの「体力」「ストレス」「パートナーへの愛情」「育児スキル」などのステータスが変動します。

特徴的なのが、各マスに止まるごとに感想を記入してシェアするというルールです。妊娠発覚や職場での出来事など、ひとつひとつのエピソードに対して、ママ・パパそれぞれの立場で感想を出し合います。お互いの共通点や違いに気づくことができ、対話のきっかけになります。

実際にやってみると、出産前後にママの体力がゼロになることが多く、出産の負担が大きいことを感じてもらえます。初めて出会った人同士なのに、赤ちゃんの名前を決めるのに話が盛り上がることもあります。想定外の事件が起こったり、無事に出産できてホッとしたり、今まで参加された多くの人が思った以上に楽しんでいるようでした。

また、出産や育児の未経験者だけでなく、経験者にも新たな気づきがあるようで、「出産前にやっておきたかった」などの声があがります。人事関係の職に就いている人からは、「育休普及のために、上司にもやらせたい」といった意見も出ます。私は、妊産婦支援のために認定ファシリテーターの資格を取りましたが、今では看護学校での講義の一環としても活用しています。

赤ちゃんの誕生を幸せに迎えるためには、妊娠期からの準備が必要です。物品だけでなく、心の準備も大切です。ママだけでなく、パパにも主体的に関わってほしいと思います。「サンゴクエスト」は、そのきっかけを与えてくれるゲームです。オンラインでの体験会もありますので、ご興味がある方はぜひ参加してみてください。

「子どもはとっくに生まれちゃってるよ」という方もご心配なく。対話が大切なのは、お子さんが大きくなってからも変わりありません。パートナーと気持ちを伝えあい、対等に意見を交わせる関係を続けていきましょう。もちろん、体験会の参加も可能です。

最後に、妊娠・出産・育児には、家族だけでなく周囲の支援も欠かせないことを付け加えておきます。以前ご紹介した「産後ケア事業」など、地域の力を最大限に活用してくださいね。

《参考サイト》

サンゴクエスト:https://sangoquest.com/

※体験会の日程や参加申込もこちらから行えます。

Mimosa代表 杉山伸子

 10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。