2021.5月号 ドクターコラム
産婦人科医 Mimosa代表 杉山伸子
「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医、杉山伸子です。
このコラムでは、リプロダクティブへルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしています。
《お子さんが初経を迎える前に》
初めての月経(生理)のことを「初経(初潮)」といいます。初経を迎える平均年齢はおよそ12歳です。
「自分のカラダから血液が出る」という経験は、驚きや不安を伴いがちです。実際に経験する前に、お子さんのココロとモノの準備を済ませておきましょう。
《小学校中学年までに、ココロの準備を》
月経が起こるしくみを知っておくことは、女の子だけでなく男の子にとっても重要です。小学校でも保健の授業で学びますが、ご家庭でも伝えられるといいですよね。
《月経は、赤ちゃんのためのベッドを修復するためのもの》
女の子の体の中にある子宮は、赤ちゃんを育てるための臓器です。
赤ちゃんが育つためには、へその緒でお母さんから栄養をもらう必要がありますが、へその緒ができるまでの小さな卵の時は、子宮の壁(子宮内膜)にくっついて直接栄養をもらいます。つまり、子宮内膜は赤ちゃんのためのベッドに相当します。
子宮内膜は、赤ちゃんができたらはがれることはありませんが、赤ちゃんができなかった場合には、新しいものに作り替えるためにはがれます。この時に子宮から出てくるのが月経です。
月経は、赤ちゃんのためのベッドである子宮内膜を修復するための生理現象であり、初経があれば子宮が赤ちゃんを育てるための準備ができるようになったことを意味します。
《モノの準備とお手当について》
おりものが出るようになったり、胸がふくらみ始めたりしたら、そろそろ初経が起こるサインです。これらのサインははっきりしないこともあるので、早めに準備をしておきましょう。
生理用のショーツ(サニタリーショーツ)と生理用品をそろえておきます。昔に比べてサニタリーショーツも選択の幅が増えました。ぜひ、お子さんと一緒に買いに行ってください。お子さんが気に入ったものを選び、ココロの準備の後押しをしましょう。
初めての月経は、うっすら出血したり下着に茶色いものがついたりする程度で始まることが多いです。そんなに慌てる必要がないことともに、生理のお手当方法についても伝えておきましょう。
《お手当とエチケット》
日本における生理用品の主流は、使い捨てナプキン(紙ナプキン)です。まずは、ナプキンでのお手当を身につけましょう。
①ナプキンは、下着(サニタリーショーツ)に当てて経血を吸収するタイプの生理用品です。さまざまな種類があるので、より適したものを使いましょう。
・ナプキンの大きさや形:吸収できる経血の量に合わせて長さが異なります。基本的な形は下着のクロッチ部分に合うようになっていますが、動いてもずれにくい羽つきタイプのものもあります。また、寝ている状態でも漏れにくい夜用タイプや、ショーツ一体型のものも作られています。経血の量や過ごし方に合わせて選べるよう、少なくとも昼用と夜用は準備しておきましょう。
・素材:直接肌に触れるもののため、湿った状態が続いたり擦れたりすることでかゆくなることもあります。お肌のトラブルがあれば、表面の素材に綿を使用した製品や吸収力があって肌がサラサラした状態を保てる製品などを試して、快適に過ごせるものを選んでいきましょう。慣れてきたら、布で作られた布ナプキンを使ってもよいでしょう。
②ナプキンは適宜交換しましょう。長時間つけていると、雑菌が繁殖したりかゆみの原因になったりする可能性があります。多い日では2~3時間、少ない日でも4~6時間を目安に交換するようにしましょう。
③ナプキンを交換した後の処理も大切です。使い終わったナプキンは、新しいナプキンの包装材やトイレットペーパーにくるんで、サニタリーボックスに捨てましょう。水には溶けないので、水洗トイレに流してはいけません。また、使用後のトイレに血液が付着していないか、チェックする習慣をつけておくとよいでしょう。
④血液が付いた下着は、自分で洗いましょう。月経は大人になるためのステップのひとつです。大人になったのですから、自分のカラダを守ってくれる下着も自分で洗えるようにしたいですよね。
ところで、最近は、紙ナプキン以外の生理用品の種類が増えました。
個人的には、お子さんにも使えそうなものとして、吸水型のサニタリーショーツに注目しています。
ショーツそのものが経血を吸収してくれるので、ナプキンが必要ありません。ナプキンをトイレに持っていかずに済むので、周りの目が気になる年ごろのお子さんには安心材料になりそうです。
簡単に交換できる紙ナプキンと完全に置き換えるのは難しいかもしれませんが、部活動で激しい運動をする時やポケットがない服を着ていく時など、吸水型サニタリーショーツが重宝しそうな状況で使ってみても良いかもしれません。製品によって吸水できる量が違うので、まずはお家で試して使い心地などを確認してからにしましょう。
生理用品の無償化や学校などの施設に生理用品を備え置くという話も出てきました。これを機に、月経に対する理解が進むことを願っています。
月経という大人のカラダになるための大切な変化を通して、適切なお手当を身に付け、自分のカラダを大切にすることの重要性を認識してほしいと考えます。
生理用品も、無料で使えるものがあればよいのではなく、自分の月経の状態や体調に合わせて、適切なものを自由に安心して選択できることが必要です。初経を迎える前からその準備は始まります。今日のコラムが、お家での性教育の助けになれば幸いです。
Mimosa代表 杉山伸子
10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。