2021.11月号 ドクターコラム
「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医、杉山伸子です。
このコラムでは、リプロダクティブへルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしていきます。
お子さんから「赤ちゃんは、どこから来たの?」と聞かれたら、あなたはどうお答えになりますか。答えはわかっていても、どう伝えようかパッと思いつかない方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、「性に関する子どもの質問に対する答え方」についてご紹介します。
子どもが性に関する疑問を抱くことは自然なことです。お子さんの年齢にかかわらず、性に関する質問をしたことを否定的にとらえないでください。
そのうえで、お子さんに合わせて答えるようにしましょう。まず、いくつか例を挙げてみます。
Q. 赤ちゃんは、どこから来たの?
A. 赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にある、子宮というところから生まれてきたよ。
《解説》まずは、赤ちゃんが子宮の中で育つということから伝えましょう。続けて、どうやって赤ちゃんができるのか、どこを通って出てくるのか、を伝えていくとよいでしょう。
Q. おなかの中から、どうやって出てきたの?
A. 子宮からつながっている腟(ちつ)という通り道を通って出てきたよ。腟が通りにくい時は、お母さんのおなかからお医者さんが手術で出してくれることもあるよ。
《解説》子どもは初めて聞く「腟」という臓器に対して、恥ずかしさを感じることはありません。教える側も、あくまで科学的な事実として教えましょう。腟の場所は、おしっこが出る穴(尿道口)とうんちが出る穴(肛門)の間にあること、赤ちゃんが通る大切なところなので、腟も大切な臓器であることも伝えておきましょう。
帝王切開術で産まれる赤ちゃんの数が増えています。帝王切開術のことを最初から教える必要はありませんが、もしお子さんが帝王切開術で産まれていたら、そのことを語ってあげてもいいでしょう。
Q. どうやって赤ちゃんができるの?
A. お父さんの体の中にある精子と、お母さんの体の中にある卵子がくっついてできるんだよ。最初は本当に小さな細胞だったのが、子宮の中で大きくなるんだよ。
《解説》「赤ちゃんができる」と聞かれると、性交のことをイメージしてしまうかもしれません。小さなお子さんには、そこまで伝える必要はありません。まずは、精子と卵子という新しい命のもと(「配偶子」と言います)があること、それがくっついて新しい命ができることから教えていきましょう。
共通して大切なことは、
①シンプルに答える
②子どもが理解できる範囲で答える
③嘘をつかない
④子どもの「知りたい」という好奇心を否定しない
⑤「質問や悩みがあれば相談にのるよ」という姿勢を示す
です。
お子さんの質問に対する答えは、シンプルで基本的なことだけでかまいません。基本を繰り返していくことで知識を積み重ねていけばいいので、初めからたくさんのことを教える必要はないのです。お子さんの理解度と興味に合わせて答えるようにしましょう。お子さんの理解度を一番よく知っているのは、保護者であるあなた自身です。
お子さんの質問に対して、はぐらかしたり嘘をついたりしないようにしましょう。性に関することを質問したらダメなんだと思われてしまうと、今後も質問や相談をしてくれなくなるかもしれません。
また、子どもが自分のからだに興味を持つことは自然なことです。その「知りたい」を大切にしましょう。否定することなく、答えてあげましょう。ただ、公の場や誰にでも聞いたりしていい話題というわけでもありません。会話の中で、「私はあなたに聞かれたらこうやって答えるけど、この話はプライベートなものを含んでいるから、不快に思う人もいるよ。その時は、話すのをやめようね」という形で、周囲の人への配慮について教ええるのもよいでしょう。
小さい頃から質問に答えていくことで、「質問や悩みがあれば相談にのるよ」という姿勢が伝わります。繰り返される会話の中で、性に関する知識を広げて深めてあげてください。
ご家庭での性教育に関して、専門家によるサイトがあります。ぜひ、ご参考になさってください。
Mimosa代表 杉山伸子
10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。