2020.7月号 ドクターコラム
「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医、杉山伸子です。
このコラムでは、リプロダクティブへルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしています。
2人目不妊を考える
産婦人科医 Mimosa代表 杉山伸子
「そろそろ2人目が欲しい」
「まだ先だけど、いつかは2人目が欲しい」
「2人目が欲しいけど、なかなかできない」
これらのうち、どれかに当てはまる方は必読!今回のテーマは2人目不妊です。記事の最後に、自宅でできる「タイミング療法」についても解説します。
2人目不妊とは、医学的には「続発性不妊症」と言います。既に妊娠・出産の経験がある女性が、その後妊娠しないことを意味します。
1人目が順調に妊娠したから、そのうちできるだろうと思っていたが、なかなか妊娠しないというカップルは少なくありません。実際、不妊で悩んでいる方の3人に1人は2人目ができなくて悩んでいると回答しています(「ワンモア・ベイビー・ラボ」の調査による:https://www.1morebaby.jp/column/articles/1628/)。
2人目不妊の原因は?
● 1人目のときより年を重ねている
男性も女性も等しく年を重ねています。年齢とともに妊娠のしやすさは低下します。女性では特に、30歳代半ばからの低下が顕著になります。育児や仕事が忙しく、新婚の頃に比べて性交の回数が減ることも原因となりえます。
● 新たな病気・状態が生じている
女性の場合、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気は、年齢とともに罹患率が上昇します。1人目を妊娠するときにはなかった病気によって、妊娠しにくくなっている可能性があります。
● 既にあった病気・状態が進行している
1人目を妊娠するときには妊娠に影響しなかった程度の病気が進行している可能性もあります。たとえば、男性の精液所見を悪化させる精巣静脈瘤は年齢とともに悪化します。1人目のときは妊娠に支障がなかったために病気に気付かないまま、2人目不妊のときに初めてわかることもあります。
1人目のときとは異なり、小さなお子さんがいる環境で性交の回数が減っているカップルが少なくありません。自然妊娠を望む場合には、精神的な面も含めて環境を整える必要があります。
● 性交回数が減った、あるいはセックスレス
1人目のときとは異なり、小さなお子さんがいる環境で性交の回数が減っているカップルが少なくありません。自然妊娠を望む場合には、精神的な面も含めて環境を整える必要があります。
● 不妊治療専門クリニックへの通院が困難
不妊治療を受ける場合、お子さんがいるために通院が難しいと感じるかもしれません。不妊治療専門クリニックでは、お子さん連れを認めていない施設があります。不妊治療では、特に生殖補助医療を受ける場合には、通院の回数が頻繁だったり受診時間に制約があったりします。お子さんの予定と合わせるのに苦労される方もいらっしゃいます。
● 治療への踏ん切りがつかない
2人目不妊のときは、「1人目を妊娠できたから、異常はないはず」と思いがちです。しかし、妊娠のしやすさは、男性も女性も時間とともに変化するものです。治療する決断が必要なこともあるでしょう。
2人目不妊で大切なこと
2人目がなかなかできない場合の原因は、カップルによってさまざまです。ただ、すべてのカップルに共通して言えることが一つだけあります。
それは、年齢は待ってくれないということ。
そして、年齢とともに妊娠のしやすさは確実に低下します。
それを踏まえて、2人目を望んでいるカップルには早めに行動を起こすことをお勧めします。
1. 自分の人生設計、家族計画を立てよう
子どもを何人欲しいのか、いつまでに欲しいのか、年の差はどの程度がよいか、すべてがかなうわけではないとしても、カップルで家族構成のプランを立ててみましょう。
仕事や育児を含めた生活全般を見渡して、優先順位をつけることも必要でしょう。 家事と育児の分担、仕事との両立など、2人一緒に取り組む必要があります。
2. 欲しいと思ったら、早めに行動開始
1人目を不妊治療で授かったカップル、既に「なかなか妊娠しないな」と感じているカップルは、不妊治療を開始することを考えましょう。
そうでない場合、妊娠しやすい時期を見計らって性交する「タイミング療法」を自分たちで始めてみましょう。
2. ステップアップは思い切って
「なるべく自然に妊娠したい」と願うカップルは少なくありません。また通院の回数や費用を考えても、生殖補助医療(体外受精)を受ける決断をするのは容易ではありません。
ただ、一番大切なのは妊娠することであってその過程ではありません。「子どもをもう1人産み育てたい!」と強く思っていらっしゃるなら、思い切って早めに治療を始めてみませんか。治療期間も短く済む可能性があります。
タイミング療法について
タイミング療法とは、妊娠しやすい時期を見計らって性交することを言います。産婦人科における不妊治療の最初のステップになります。
排卵する4日ほど前から排卵翌日までが妊娠しやすい時期に相当します。そのため、排卵日を予測することで妊娠しやすい時期を判断します。自宅でできる予測方法として、基礎体温を測る方法と市販の排卵検査薬を用いる方法があります。
月経周期が順調な方は、何ヶ月か基礎体温を測定して排卵の時期を予測し、その数日前から複数回タイミングをとる(性交する)ことをお勧めします。基礎体温を入力するアプリでは、過去の月経周期から排卵の時期を予測してくれる機能も利用できます。
排卵検査薬を使用する場合には、排卵検査薬が陽性になった日かその翌日にタイミングをとるようにします。連日検査をするのは大変なので、基礎体温などからある程度予測をつける方がよいでしょう。陽性になる少し前にもタイミングがとれていると理想的です。
自宅でのタイミング療法を続ける目安は半年、月経周期で6回ほどです。それでも妊娠しなければ、不妊症の検査を受けることを検討しましょう。
最後に
キッズルームがある不妊治療専門や、不妊治療に配慮してくれる職場もありますが、社会的な環境はまだ十分には整っていません。
だからこそ、家族内の環境はベストな状態にしていきましょう。「そろそろ2人目」「いつかは2人目」と思ったら、一度カップルでしっかり話し合ってみませんか。
Mimosa代表 杉山伸子
10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。