130.2026.1月号 ドクターコラム【RSウイルス母子免疫ワクチンとは?~赤ちゃんを守るための新しい選択肢】


RSウイルス母子免疫ワクチンとは?~赤ちゃんを守るための新しい選択肢~

明けましておめでとうございます。今年も皆さんにとって、素敵な一年となりますように。

このコラムは、「リプロ」のプロ集団Mimosa代表の産婦人科医・杉山伸子が、リプロダクティブ・へルス(略して「リプロ」)に特化した情報を皆さんにお届けしています。

《RSウイルスとは?》

RSウイルス(RSV:Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児に多い呼吸器感染症の原因ウイルスです。多くは軽い風邪症状で済みますが、生後まもない赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎を起こし、入院が必要になることもあります。特に生後6か月未満の乳児は重症化しやすく、これまで有効な予防法が限られていました。

近年、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルス感染症から守ることを目的とした「RSウイルス母子免疫ワクチン」が開発・実用化され、日本でも使用できるようになりました。

《どのような仕組み?》

母体で作られた抗体は、胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。RSワクチンを妊娠中に接種すると、母体内でRSウイルスに対する抗体が作られます。この抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行することで、赤ちゃんのRSウイルスに対する免疫力を高めます。具体的には、生後数か月間、赤ちゃんがRSウイルスに感染しても重症化しにくくなると考えられています。

《効果と安全性に関する科学的根拠》

海外を中心に行われた大規模な臨床試験では、妊婦へのRSワクチン接種により、生後早期のRSウイルスによる重症下気道感染症が有意に減少したことが報告されています。一方で、効果は永続的ではなく、主に生後数か月間の予防に限られるようです。

アメリカの大規模データ(妊娠32~36週接種)では、RSワクチンの妊婦への接種の安全性が示されました。早産率も通常範囲内で、ワクチン接種が早産の直接的な原因となる証拠は認められていません。

《日本での定期接種化》

日本でも、2026年4月からは定期接種となり、公費での補助がおりる予定です。

RSウイルス母子免疫ワクチンは、最も効果が見込まれる妊娠28~36週の間の1回接種が勧められています。

定期接種となりましたが、「すべての妊婦が必ず接種しなくてはいけない」というわけではありません。メリットとデメリットの両方を理解したうえで選択する予防手段の一つとお考えください。


《気になるポイント Q&A》

Q1. お腹の赤ちゃんに悪影響はありませんか?
現在までの臨床試験や使用実績から、重大な安全性の問題は確認されていません。生ワクチンではなく、妊娠中に使用可能なワクチンとして設計されています。

ただし、医薬品である以上「副反応がゼロ」ということはなく、母体における接種部位の痛みや一時的な発熱などが報告されています。

Q2. 妊娠何週ごろに接種するのですか?
抗体が効率よく赤ちゃんに移行することを考慮し、妊娠後期での接種が想定されています。日本では、妊娠2836での接種が勧められています。

Q3. 他のワクチンと同時に接種できますか?
はい。医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することが可能です。主治医の先生とご相談ください。

Q4. ワクチン以外の予防法はありますか?
RSウイルスは、接触感染と飛沫感染によって感染が広がります。

赤ちゃんが生まれたら、タオルなどの共有は避け、しっかりと手を洗いましょう。兄姉からの感染を避けるよう、咳や鼻水などの症状がある家族は赤ちゃんとの接触をなるべく控えましょう。これらの対策は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などとも共通した、基本的な感染対策となります。

なお、赤ちゃんの感染リスクが高い場合には、赤ちゃんに直接投与する抗体製剤という別の予防手段もあります。抗体製剤については、詳しくは小児科医にご相談ください。

《参考サイト》

ワクチンを学ぶ~RSウイルスを学ぶ~(ファイザー株式会社)→https://www.pfizervaccines.jp/rs-virus/

RSウイルス感染症に関するガイドラインや考え方の情報(日本小児科学会)→

https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=658

Mimosa代表 杉山伸子

 10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。

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