2025.9月号 ドクターコラム【自分を大切にするために~アサーティブネスのススメ~】
家庭や職場で、こんな経験はありませんか?
‐頼まれごとを断れずに困っている。
‐反論したいけど、相手を傷つけそうでこわい。
‐全身で「イヤだ」とアピールしているのに、まったく伝わらない…。
言いたいこと、特に言いづらいことやネガティブな感情を相手に伝えるのは、難しいものです。かと言って、自分の気もちを伝えられずにいると、しんどくなるばかりです。
そこで注目されているのが「アサーティブネス(assertiveness)」というコミュニケーションのあり方です。
アサーティブネスとは?:自分も相手も尊重する自己表現
私たちは、相手と自分のニーズが異なる時、受け身か攻撃的か、いずれかの態度をとりがちです。
自分のニーズではなく相手のニーズを優先させる、望まない要求を受け入れてしまう、などは受け身のパターンです。
自分のニーズを強引に押し通す、相手をなじって自分の意見を通そうとする、などは攻撃的なパターンです。
一方で、アサーティブネスとは、「自分も相手も尊重する自己表現」のことです。受け身でも、攻撃的でもなく、率直で誠実な伝え方を目指します。
アサーティブネスは、練習することで身につけられるコミュニケーション・スキルです。
このコラムでは、アサーティブなコミュニケーションに役立つツールのひとつ、I(アイ)メッセージをご紹介しましょう。
I(アイ)メッセージとは?:「わたし」を主語にした伝え方
意見が対立した時、感情的になりがちな時、相手を尊重しながら自分の考えや気持ちを率直に伝える方法が「I(アイ)メッセージ」です。
これは、「あなたは〜だ」ではなく、「私は〜と感じる」と、自分の視点から語る方法です。
以下に、典型的な場面を例にして、良い例と悪い例を示します。
状況:あなたは夕食を準備して、配偶者の帰りを待っています。しかし、配偶者は約束の時間に帰ってきませんでした。
待ちぼうけの状況ですよね。あなたはどう感じるでしょうか。そして、その気持ちをどのように伝えるでしょうか。
伝え方①
「あなたが遅く帰ってくると、私は心配になってしまうし、夕食を一緒に食べられないのが寂しく感じるの。次からは連絡をもらえると安心できるな。」
伝え方②
「なんでいつも連絡しないの?こっちはずっと待ってたんだけど。あなたって本当に無神経よね。」
配偶者の立場にたってみましょう。「連絡せずに悪かった」と思っていても、伝え方②のように言われると、カチンと来てしまうのではないしょうか。
伝え方①がI(アイ)メッセージです。
そのポイントは、
- 「私は〜と感じる」「〜してもらえると嬉しい」など、自分の感情と希望を伝えている
- 相手の人格や行動を否定していない
- 解決策や希望を添えている
です。アサーティブなコミュニケーションができています。
一方で、伝え方②は、「あなたが」が主語になっていますね。
- 「あなたは〜だ」「なんで〜しないの?」など、相手は責められたと感じる
- 感情が伝わるが、攻撃的で防衛的な反応を引き出しやすい
- 解決策がなく、関係の摩擦を生む可能性が高い
といったデメリットがあります。
I(アイ)メッセージには、練習が必要
事故にでもあったのではないかと配偶者のことを心配していたのに、思わず責めるような口調になってしまう…。私にも経験があります。
アサーティブネスを身につけるには、「I(アイ)メッセージで伝えるといい」と知るだけでは不十分です。実践を積み重ねて、スキルとして身につける必要があります。
最近は、気軽に生成AIを使うこともできます。
実際に、I(アイ)メッセージの練習ができるような夫婦間でのシチュエーションをたずねてみると、
- 家事の分担について
- 子どもの教育方針について
- スマホや仕事ばかりで会話が減っていると感じるとき
- セックスやスキンシップについて
- 金銭感覚や支出について
などの例を挙げてくれました。 それぞれのシチュエーションにおいて、どんな伝え方がいいのか、あるいは悪いのか、あなたも考えてみてくださいね。

Mimosa代表 杉山伸子
10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。
アーカイブ
2019年11月~2023年12月まではこちらです★