132.2026.3月号 ドクターコラム【あなたがごきげんであること、それが一番大事】


みなさん、こんにちは。
このコラムは、「リプロ」のプロ集団 Mimosa 代表の産婦人科医・杉山伸子が、リプロダクティブ・ヘルス(略して「リプロ」)に特化した情報をお届けしています。

今回で、このコラムも最終回となりました。
これまで女性の健康や生き方についてお伝えしてきましたが、

最後にあらためてお伝えしたいのは「自分のウェルビーイングを大切にすること」です。

ウェルビーイングとは、
身体的、精神的、社会的に満たされた良好な状態のこと。
「ただ健康である」以上に、日々の暮らしの中で心地よく過ごせているかを大切にする考え方です。

「自分のことは、つい後回しにしてしまう」——そんな声を診療の中で何度も聞いてきました。
仕事、家事、育児、介護。やるべきことに追われると、自分の体調や気持ちはどうしても後回しになります。
けれど本当は、自分を大切にすることこそが、家族や大切な人の幸せを支える土台になります。

私は今、ほぼ毎日ごきげんで過ごしています。しかし、以前はそうではありませんでした。

忙しさに流され、自分の気持ちを置き去りにしてしまい、ふさぎ込む日々が続いた時期があります。
「このままでは続けられない」と自分に正直になれたとき、働き方や時間の使い方を見直す決心をしました。

まずは、やりたいこととやりたくないことを丁寧に分けること。
無理に背伸びをせず、自分の力が自然に向かう方向を選ぶこと。
睡眠・食事・運動といった基本的な健康管理を後回しにしないこと。

そんな小さな工夫を積み重ねるうちに、心のゆとりが少しずつ戻ってきました。

その変化は、周囲との関わり方にも表れました。
心身が整っていると、自然と優しくなれます。場の空気まで変わっていきます。

今思い返せば、余裕がないときには、きつい言葉が出てしまったり、不必要に自分や相手を責めたりしていました。
「本当は優しくしたいのに、その力が残っていない」——そんな時期が確かにありました。

だからこそ、ウェルビーイングを整えることは、自分のためだけではありません。
自分が満たされ、穏やかであってこそ、優しさは自然に循環していきます。

では、健やかな状態を保つために、何を意識すればよいのでしょうか。

  • 自分のサインに気づく

「最近ぐっすり眠れている?」「どこか痛むところはない?」「理由もなく気分が沈んでいない?」
そんな小さな問いかけが、セルフケアの第一歩です。

  • 生活の土台を整える

十分な休養、バランスのよい食事、無理のない運動。
特別なことではありませんが、この「あたりまえ」を丁寧に積み重ねることが、感情の安定や思考の柔軟さを支えます。

  • 人とのつながりを大切にする

信頼できる人と話し、共感し合い、笑い合うだけで、心は回復します。

  • 境界線を引く

相手を思いやることと相手の問題まで背負い込むことは違います。
「それは本当に私の責任?」と問いかけ、必要なときには断ることも大切です。自分を守り、関係を長く健やかに続けるための知恵でもあります。

  • 自分で決める

健康、仕事、生き方。
情報があふれる時代だからこそ、確かな情報を得て、自分の価値観に照らして選ぶ力が必要です。誰かの期待や世間の「普通」に合わせるのではなく、「私はどうしたいのか」と問い続けることが、自分らしい人生を形づくります。

それでも、一人では抱えきれないときがあります。
そんなときは、どうか助けを求めてください。
頼ることは弱さではありません。相談先が複数あるだけで、心には逃げ道ができます。

自分を大切にすることは、決して自分勝手ではありません。
自分を整え、守り、満たすこと。その余白があるからこそ、人に優しくできるのです。

あなたが健やかで、穏やかに笑っていられること。
それは、家族や大切な人にとって何よりの安心であり、幸せの源です。

最終回の締めくくりとして、心からお伝えします。
これからも、自分の心と体の声に耳を澄ませてください。
あなたがあなたらしく、しなやかに生きていけること。そして、その幸せが周囲へと広がっていくことを願っています。

Mimosa代表 杉山伸子

 10年を超える産婦人科医としての臨床経験を通じて、女性がより健康で幸せな生活を送るためには、女性の健康リテラシーの向上が大切だと考えるようになりました。
その実現を目指し、女性の健康に関する情報提供・教育・相談を行う団体として、Mimosaを立ち上げました。
共に活動しているメンバーは、今までの職場で出逢った信頼できる女性医療のプロばかりです。

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